PDFの名前や住所を黒い四角で隠し、見た目はきれいに消えた。そこで「これなら送って大丈夫」と思いたくなります。

ところが、その黒い四角が元の文字の上に重なっているだけなら、下の文字データが残っていることがあります。画面では読めなくても、範囲を選んでコピーし、Wordやメモ帳へ貼り付けると読めてしまう。これは特別な攻撃ではなく、普通のコピー操作で起こり得ます。

個人情報保護委員会が2026年3月11日に公表した資料にも、地方公共団体が個人情報を白地処理または黒塗り処理してウェブ公開したものの、処理が不十分で、文字をコピーして文書作成ソフトへ貼り付けると閲覧できた漏えい事案が載っています。

黒く見えているのに消えていない。ここは、PDFに慣れている人でも見た目に引っ張られやすいところです😳

この記事では、PDFをメール、LINE、クラウド、ウェブサイトで共有する前に確認したい5項目を整理します。結論は、元ファイルのコピーを作る → 専用の墨消し機能で削除する → 非表示情報を消す → 受け取る人と同じ状態で検査する → 宛先と権限を確認するです。

「見えない」と「データがない」は別の話 🔍

WordやPowerPointで黒い四角形を置く。文字色を白にする。画像編集でぼかす。こうした操作は、見た目を変える方法としては簡単です。ただし、元の文字や画像をファイルから削除したとは限りません。

PDFには、画面に見える文章だけでなく、次のような情報が入る場合があります。

  • 選択・検索できる本文テキスト
  • 作成者名やタイトルなどのメタデータ
  • コメント、注釈、変更履歴
  • 非表示レイヤーや隠しテキスト
  • 添付ファイル、フォーム入力、ブックマーク

Adobeも、PDFには表示中の文字や画像以外に、メタデータ、コメント、非表示レイヤーなどが含まれる可能性があると案内しています。つまり、黒く隠した一か所だけ見て終えると、別の場所に情報が残ることがあります。

必要以上に怖がることはありません。ただ、黒い図形を重ねる操作は「削除」ではないと覚えておくと、事故をかなり避けやすくなります。

確認1:原本を残し、公開用コピーで作業する 📁

最初に、元のPDFやWord文書を複製します。ファイル名は、たとえば次のように役割が分かるものにします。

  • 申込一覧_原本_外部共有禁止.pdf
  • 申込一覧_公開用_確認前.pdf
  • 申込一覧_公開用_確認済み.pdf

少し大げさに見えますが、最終.pdf最終2.pdf本当の最終.pdfと増えていくより、ずっと迷いません😅

Microsoftは、Word・Excel・PowerPointのドキュメント検査で情報を削除すると元に戻せない場合があるため、原本のコピーで実行するよう勧めています。削除作業はやり直せる状態で始めるのが堅実です。

次に、「何を隠すか」だけでなく、何を公開してよいかを先に決めます。氏名を消しても、住所、電話番号、メールアドレス、会員番号、顔写真、QRコード、署名、自由記述の内容を組み合わせると、本人を推測できることがあります。

迷う場合は、隠す項目を減らすのではなく、公開する項目を必要最小限にします。ここは攻めて情報を残すより、目的に不要な列やページを丸ごと外す方を推します。

確認2:元がWordなら、先に文書検査を使う

PDFになる前のWord文書が手元にあるなら、元データ側で不要な個人情報を削除してからPDFへ書き出す方法があります。

Windows版Wordでは、コピーした文書を開き、次の順で確認します。

  1. ファイルを押す
  2. 情報を開く
  3. 問題のチェックを押す
  4. ドキュメント検査を選ぶ
  5. 確認したい項目にチェックを入れ、検査を押す
  6. 結果を読み、削除する項目のすべて削除を押す
  7. もう一度検査し、必要な情報が残っていないか確かめる

Microsoftによると、ドキュメント検査はコメント、変更履歴、文書のプロパティ、個人情報、ヘッダーやフッター、隠し文字などを探す助けになります。ただし、すべてを自動で安全に判断してくれる魔法のボタンではありません。

たとえば、本文中に普通の文字として書かれた個人名は、必要な本文なのか削除対象なのかをソフトが決められません。最後は人が内容を読む必要があります。検査結果を0件にすることより、共有目的に不要な情報がないことの方が大切です🤔

確認3:PDFでは「墨消しを適用」まで行う ✂️

すでにPDFしかない場合は、PDF編集ソフトの墨消し(redaction)機能を使います。Adobe Acrobat Proの公式手順は、次の流れです。

  1. すべてのツールからPDFを墨消しを選ぶ
  2. テキストと画像を墨消しを選ぶ
  3. 消したい文字または画像を選択する
  4. 左側の適用を押す
  5. 非表示情報も削除するか選び、続行する
  6. 元ファイルとは別の名前で保存する

大事なのは、黒い印を置いたところで終わらず、適用して保存するところまで進めることです。Adobeの手順でも、選択後に「適用」を押し、非表示情報を削除するか確認してから保存します。

氏名が何度も出てくる文書では、1件ずつ目で追うだけだと漏れやすくなります。検索できるPDFなら、氏名、電話番号、メールアドレス、住所の一部、会員番号などでも検索し、出現箇所を洗い出します。ただし、画像としてスキャンされた文字は通常の文字検索で見つからない場合があります。ページを目視する作業も外せません。

無料アプリやオンラインサービスにも黒塗り機能はありますが、製品ごとに「見た目だけ隠す」のか「元データを削除する」のかが違います。仕様を確認できない場合は、機密文書をいきなりアップロードしません。少量なら、共有してよい内容だけを新しい文書へ転記してPDFを作り直す方が安全で分かりやすいこともあります。

確認4:非表示情報も削除する

本文の墨消しが終わっても、作業はもう一段あります。Adobeは、PDFにメタデータ、コメント、非表示レイヤーなどが含まれる可能性があるとして、Acrobat Proの文書の非表示情報を削除機能を案内しています。

Acrobat Proでは、すべてのツール → PDFを墨消し → 文書の非表示情報を削除と進み、すべて削除するか、項目を選んで削除し、別名で保存します。

ここで確認したいのは、たとえば次の項目です。

  • 文書の作成者名、会社名、タイトル
  • コメントや注釈に残った名前・会話
  • 添付されている別ファイル
  • フォームに入力した値
  • 非表示レイヤー、隠し文字、切り抜き前の内容
  • 不要なリンク、アクション、JavaScript

画面に見えない情報は、普段の閲覧では気づきにくいです。だからこそ、専用の検査機能を使う意味があります。ただし、削除後は元に戻せない場合があるため、ここでも原本ではなく公開用コピーへ処理します。

確認5:受け取る人のつもりで最終PDFを検査する ✅

作った本人は、どこを隠したか知っています。そのため、黒い部分に目が行き、ほかの情報を見落としがちです。最終確認では、編集画面を閉じ、共有予定の完成PDFだけを開きます。

次の順で確認すると、作業漏れを見つけやすくなります。

  1. 消した部分をマウスで選び、コピーしてメモ帳へ貼り付ける
  2. 氏名、電話番号、メールアドレス、住所、番号をPDF内検索する
  3. 文書のプロパティを開き、作成者名などを確認する
  4. コメント、添付ファイル、レイヤー、フォーム項目の有無を見る
  5. Chrome、Edge、スマートフォンなど別の閲覧環境でも開く
  6. ページ数と順番を確認し、不要ページが混ざっていないか見る

コピーできなければ絶対安全、という意味ではありません。画像として残った文字はコピーできなくても目で読めますし、OCRで読み取られることもあります。コピー確認、検索、目視を組み合わせるのがポイントです。

契約書、顧客名簿、健康情報、マイナンバー、金融情報など影響が大きい文書は、送信者一人だけで完了にしません。別の人に最終PDFだけを渡し、「隠した場所」ではなく「公開してよい情報だけになっているか」を確認してもらう方が堅実です。

送る直前の5項目チェックリスト

  1. 原本を残し、公開用コピーへ処理した
  2. 黒い図形を重ねるだけでなく、専用の墨消し機能を適用した
  3. メタデータ、コメント、添付、非表示レイヤーなどを確認した
  4. コピー・検索・目視・別端末で最終PDFを検査した
  5. 宛先、共有リンクの権限、公開範囲を確認した

最後の5番も地味ですが欠かせません。正しく墨消ししたPDFでも、違う相手へ送ったり、クラウドの共有範囲を「リンクを知っている全員」にしたりすれば、別の事故になります💦

黒塗りの安全確認は、難しい専門知識より見た目を信用しすぎない習慣が効きます。黒いから消えた、PDFだから編集できない、パスワードを付けたから中身も消えた——この三つを分けて考えるだけでも、判断しやすくなります。

SCROOMで一緒に確認できます

SCROOMでは、WordやPDFの作成、ファイル共有、個人情報を含む文書の扱いを、初心者の方と画面を見ながら確認できます。

「PDFにした後の確認方法が分からない」「黒塗りが本当に消えているか不安」「共有リンクの権限が合っているか見てほしい」という場合は、実際に送る前にご相談ください。機密情報そのものを不用意に送らず、まずは使っているソフトと困っている画面を伝えるところからで大丈夫です。

参考にした公式情報