結論から言うと、富山でパソコン・AIスクール「SCROOM」を運営する私が、AIを使いながら教室専用のLMS(学習管理システム)を自作しました。
ただし、「LMSを作りました」だけなら、読んだ方に「だからどうした」と思われても仕方がありません。
この記事で本当にお伝えしたいのは、教室の予約・教材・月謝・受講回数・学習履歴をまとめた仕組みは、企業の勤怠情報の記録、給与計算へ渡す基礎データ、社内研修、設備予約、顧客対応の引き継ぎなどにも応用できるということです。
私はシステム会社の人間ではなく、授業と教室運営をする50代の経営者です。だからこそ、立派な機能を並べるより、現場で毎月繰り返す「少し面倒」をどう減らすかから考えました。
AIで教室専用LMSを自作した理由
教室を運営していると、想像以上に多くの情報を扱います。
- 生徒さんの受講予約
- 教室の時間割と座席
- 受講中のコース
- 動画教材や練習問題
- どこまで学習したか
- 月謝の支払い状況
- 今月あと何回通えるか
- 次回に何を学ぶか
これらを紙、表計算、メッセージ、別々のサービスに分けると、同じ内容を何度も入力したり、確認のたびに違う画面を開いたりすることになります。情報が食い違ったときには、どれが正しいのかを探す時間まで必要です。
市販サービスには多くの機能がありますが、教室独自の通い方や繰越ルールへ完全に合うとは限りません。そこで、教室側が既製品へ無理に合わせるのではなく、実際の運用に合わせて少しずつ育てられる仕組みを作ることにしました。
予約・教材・月謝・進捗を一つにつないだ仕組み
作ったLMSでは、主に次の情報を扱えるようにしています。
- 生徒・講師・管理者ごとのアカウントと権限
- 授業予約、時間割、座席の管理
- 動画教材、練習問題、学習の進み具合
- 月謝、支払い、受講回数、繰越の管理
- 生徒ごとの履歴や講師が確認する情報
大切なのは、機能が多いことではありません。予約した情報が回数管理につながり、受講した内容が学習履歴につながるように、同じ情報を何度も入力しなくてよい流れにすることです。
SCROOMで対応しているLMS、予約、動画配信などの内容は、事業者向けIT・AI支援でも紹介しています。
作って終わりではなく、現場で改善したこと
正直に言うと、最初から完璧な設計図があったわけではありません。
実際に使うと、「この表示では次に何を押すか迷う」「管理者には必要でも生徒さんには見せなくてよい」「月をまたいだ回数の扱いが分かりにくい」といった問題が見つかります。
そこで、画面の言葉、ボタンの位置、権限、回数の計算、変更履歴などを一つずつ直してきました。AIはプログラム作成や原因調査を助けてくれますが、「現場で本当に使いやすいか」を決めるのは、実際にその仕事をしている人です。
この経験で得たのは、プログラムそのものだけではありません。現場の仕事を「人」「時刻」「権限」「残数」「履歴」に分け、運用ルールを画面とデータへ落とし込む手順です。業種や仕事が変わっても、この整理の仕方は応用できます。
LMSの設計を企業の業務へ置き換えると
次の表は、SCROOMのLMSで現在提供している機能そのものではなく、予約・権限・履歴・集計という設計を企業の仕事へ置き換えた応用例です。実際に導入する場合は、各社の業務ルールや就業規則に合わせて個別に設計します。
| 教室で作った仕組み | 企業で置き換えられる業務 | 期待できる改善 |
|---|---|---|
| 時刻・利用履歴を記録する設計 | 打刻・休憩・勤務実績の記録 | 管理者が確認する集計元データを整える |
| 授業予約・座席管理 | シフト・面談・会議室・社用車・設備予約 | 空き状況と利用者を一画面で確認する |
| 受講回数・繰越 | 有給・代休・回数券・契約時間・保守時間 | 残数と変更理由を履歴に残す |
| 教材・動画・練習問題 | 新人研修・社内マニュアル・理解度確認 | 誰がどこまで学んだか確認する |
| 生徒メモ・学習履歴 | 顧客対応・面談・案件履歴 | 担当者が変わっても続きを把握する |
| 月謝・支払い状況 | 請求・入金・契約状況 | 確認漏れや転記を減らす |
勤怠情報と給与計算へ渡す基礎データ
LMSで用いた「時刻を記録し、権限別に確認し、変更履歴を残す」という設計は、打刻や勤務実績の記録にも応用できます。ただし、予約やシフトの予定時刻を、そのまま実際の労働時間として扱うことはできません。
厚生労働省は、使用者が労働日ごとの始業・終業時刻を確認・記録し、原則として現認やタイムカード、ICカード、パソコンの利用時間などの客観的な記録を基礎に把握するよう示しています。自己申告式の場合も、適正に運用するための措置が必要です。詳しくは労働時間の適正な把握に関する厚生労働省のガイドラインをご確認ください。
確認した勤務時間、休憩、時間外勤務の候補、深夜・休日勤務などを整理し、給与計算ソフトへ渡す基礎データを作ることはできます。ただし、自動判定した数値をそのまま確定値にはせず、管理者が確認する工程を残します。
給与計算には、会社ごとの就業規則、賃金規程、割増賃金、手当、税、社会保険などが関わります。目指すのは「給与計算を無条件に完全自動化すること」ではなく、基礎データを正確に集め、毎月の転記や集計を減らすことです。必要に応じて社会保険労務士などの専門家にも確認します。
新人研修・社内教育
動画教材、練習問題、学習進捗の仕組みは、新人研修や社内教育へ置き換えられます。
たとえば、新しく入った人が「会社の基本ルールを見る→業務マニュアルを読む→確認問題へ答える→管理者が完了を確認する」という順番で学べるようにします。
資料を渡して終わりにせず、誰がどこまで確認し、どこで止まっているかを把握できます。情報セキュリティ研修、資格更新、年1回の社内研修にも応用できます。
シフト・面談・設備の予約
授業予約と座席管理の考え方は、勤務シフト、採用面談、会議室、社用車、機械、測定器、撮影スペース、相談窓口の時間枠などへ置き換えられます。
誰が、いつ、何を使うかが一画面で分かれば、口頭確認や二重予約を減らしやすくなります。受付側だけでなく、利用する人が自分で空き状況を確認できる設計にもできます。
契約時間・残数・引き継ぎの管理
受講できる残り回数と繰越を管理する考え方は、有給・代休の日数、回数券、月間契約時間、保守サポートの残り時間などへ応用できます。
残りの数字だけでなく、「いつ、誰が、なぜ増減させたか」を履歴に残すことが重要です。
また、生徒さんの学習履歴や講師メモは、顧客対応や案件の引き継ぎに置き換えられます。「前回は何を相談されたか」「どこまで対応したか」「次に何をするか」が残っていれば、担当者が休んだ日でも別の人が状況を把握しやすくなります。
SCROOMが実際に取り組んだ制作や運用の例は、事業者向けページの制作実例からもご覧いただけます。
小規模事業者の業務改善は、一つの手作業から始められる
ここまで読むと、「うちにも大きな業務システムが必要なのか」と感じるかもしれません。しかし、最初から会社全体の巨大なシステムを作る必要はありません。
- 紙の出勤簿から、勤務実績の記録だけを切り出す
- 毎月の集計だけを自動化する
- 会議室や社用車の予約だけを一つにまとめる
- 新人研修の進捗だけを見えるようにする
- 保守契約の残り時間だけを管理する
- 顧客対応の次の作業だけを共有する
範囲を小さくすると、実際に使いながら改善できます。SCROOMのLMSも、教室で起きていることを一つずつ整理し、動かし、迷ったところを直して現在の形へ近づけてきました。
業種が違っても、「同じ情報を何度も入力する」「担当者しか分からない」「残りや期限を毎回手で数える」という困りごとはよく似ています。ここに、小さな専用システムを作る意味があります。
AIに任せる部分と、人が決める部分
AIは、画面づくり、プログラム作成、データ整理、テスト、改善案の検討を大きく助けてくれます。以前なら費用や技術の面で諦めていた小規模な専用システムも、検討しやすくなりました。
一方で、すべてをAIへ任せればよいわけではありません。
- 誰がどの情報を見られるか
- 個人情報をどこまで保存するか
- 計算結果を誰が確認するか
- 間違いをどう修正し、履歴を残すか
- 制度や法律に関わる部分をどう扱うか
- バックアップと保守をどう続けるか
こうした判断は、実際の業務ルールを伺いながら人が決めます。AIの価値は、人を不要にすることではありません。毎回しなくてもよい転記や集計を減らし、本当に判断が必要な仕事へ時間を戻すことだと考えています。
あなたの会社にも「仕組みにできる仕事」がありませんか
次の中に一つでも思い当たることがあれば、業務改善を考える出発点になります。
- 毎月、同じExcelを開いて同じ集計をしている
- 紙に書いた内容を別の画面へ入力し直している
- 同じ情報を複数の担当者が別々に持っている
- 担当者が休むと、仕事の続きが分からない
- 予約状況を電話や口頭で何度も確認している
- マニュアルを渡しても、誰が読んだか分からない
- 契約回数や残り時間を毎回手で確認している
AIで何が作れるかではなく、あなたの仕事の何を楽にできるか。そこから考えるのが、現場で使われる仕組みへの近道です。
「毎月これが面倒」という段階から相談できます
作りたいシステムの名前が決まっていなくても大丈夫です。「毎月この集計をしている」「同じ内容を何度も転記している」といった、今の困りごとをそのままお聞かせください。ご相談だけで契約になることはありません。
